訪日観光客の情報収集~来店までを一気通貫で捉えた、PoC型インバウンドプロモーション事例
1. クライアント概要
- 業界: 小売、商業施設運営、不動産開発
- 規模: 特定エリアに強固な事業基盤を持つ中堅デベロッパー
- 状況: 新店舗のオープンに際し、訪日外国人向けのプロモーションの有効性を検証したい
- ニーズ: 多様化するインバウンド客の情報収集行動を理解し、最も効果的なプロモーション手法を見つけたい
2. 課題整理|オンラインとオフラインを分断せず、戦略的に繋ぐ仕組みが必要だった
- オンラインとオフラインの行動分断: 施策の成果が売上にどう結びついたかを把握できず、PDCAが回らない。
- 投資対効果の不明確さ: 限られた予算をどこに投下すべきか判断できず、非効率な施策に陥るリスクがある。
- 国・フェーズ別アプローチの未確立: インバウンド客の多様な行動特性に対応できず、的外れな施策になりかねない。
3. 実施施策|フェーズと市場に応じたSNS・広告・オフライン施策を設計
3-1. カスタマージャーニーに沿った情報接触の最適化
オープンデータを用いたカスタマージャーニーを設計。旅行者の情報収集から来店の行動を「旅マエ(認知・検討)」と「旅ナカ(想起・来店)」のフェーズに分け、それぞれの段階で適切なプロモーションを展開する戦略を立てました 。
- 旅マエ(認知・検討)
・YouTubeやInstagram、NAVER(韓国のみ)で訪日前の情報接触層にアプローチ
・動画・SNS投稿 → メディア記事や自社SNSへ送客し、興味関心を醸成 - 旅ナカ(想起・来店)
・現地でのリマインド広告+クーポン施策で、来店行動を喚起
・SNSとオフライン施策を組み合わせ、旅中の購買を強化
まずは、台湾と韓国を最重要エリアと定め、各国の人気のSNSや訪日層の属性分析より施策の優先度付を行いました。
3-2. オンラインとオフラインを紐付ける効果測定手法の確立
施策ごとにユニークなクーポンコードを発行・管理することで、オンライン施策がオフラインの購買にどう結びついたかを可視化。以下のような多角的な指標で、ユーザーの行動分析と施策の改善に役立てました。
- 施策別クーポン利用数:各施策の購買貢献度を数値化
- 施策公開〜利用までのリードタイム:施策が購買に至るまでの検討期間を可視化
- 最終利用日までの期間:施策の効果が継続する期間を評価
- 施策別の平均客単価:高単価消費を狙う際に有効な訴求の把握
4. 成果と学び|SNS×クーポンによる高単価購買の実現と多国展開
- YouTube動画が最も効果的: 施策全体で最もクーポン利用件数が多かったのがYouTube経由。次いで、公式SNSアカウント、NAVERブログの順に高い成果を出した
- NAVER・メディア記事はロングテール効果あり: NAVERやYouTube、メディア記事は公開日からクーポン利用日までの期間が長く、継続的な効果が見込めることがわかった。特にNAVERについては、同一キーワードによる継続した投稿が有効。
- 客単価の向上: 全プロモーション施策の平均購入単価に対し、YouTube施策の単価は¥1,500ほど高く突出していた。ショップ認知から商品理解までをワンストップで伝達できることがユーザーの購買意欲の向上に寄与したと考える。
- 台湾市場での成功を韓国市場へ横展開: 台湾で最も成功したYouTubeのKOL動画施策を韓国向けにローカライズし、同様に実施したところ、多数のクーポン利用につながった。
5. 成功要因と今後の展望|データ主導でPDCAを高速回転
本PoCでは、複数の施策を同時展開しながら、各施策の結果を即時に他施策へ反映。循環型のPDCAを実現することで、効果最大化に大きく貢献しました。
- 現場の声を施策に反映: アンケート結果から「注目商品」をデータ化し、各施策の訴求軸に反映。
- 勝ちパターンをデータで抽出: YouTube動画の流入キーワード分析を広告クリエイティブに反映し、CTR改善に貢献。
- 国別の嗜好に合わせた訴求調整: 横展開可能な施策と、国ごとに最適化が必要な施策を整理し、効果最大化を阻害しない運用を実現。
今後は、検索フェーズの施策や購買意欲の高い層へのリターゲティングなど、来店直前層を狙った施策を強化。加えて、クーポン施策に依存せずブランド価値を訴求するコンテンツ設計を進め、施策全体の質と持続性を高めていきます。